コラム

相続放棄しても受け取れるもののまとめ(お墓、香典、未支給年金など)

はじめに

相続放棄をしたら、相続開始の当初から遡って相続人でなかったこととなり、財産や負債などの一切の相続財産・遺産を承継しなくてよくなります。
このような相続放棄の効果から、’相続放棄をした相続人は、何も受け取ることができない’と、思われる方もいるかもしれません。
けれど、実際はそうではありません。
’相続放棄をした相続人は、何も受け取ることができない’という、この文章には、大事なフレーズが抜けています。
それは、「相続財産」という言葉です。’相続放棄をした相続人は、「相続財産を」何も受け取ることができません。’
これを逆に言うと、相続放棄をした相続人であっても、「相続財産でないもの」は受け取ることができる、ということになります。

では、どのようなものが、相続放棄した場合でも受け取ることができるのでしょうか?
これから放棄を予定している場合に、何を受け取ることができて、何が受け取ることができないのか、迷われるケースも多いと思います。
そこで、今回は、相続放棄の際に、受け取っていいのか(相続財産なのか)迷われる一般的な項目の内、相続財産ではない、受け取りが可能なものをまとめて解説していきます。

1.未支給年金

未支給年金とは、年金を受け取っていた方が死亡した場合に、未払いとなっている年金のことです。
公的年金は後払いのため、年金を受け取っていた方が死亡した場合、死亡月までの分の年金が未支給となることが一般的です。
年金受給権は、一身専属的権利、相続されない一代限りの権利とされていますので、相続財産に含まれません。
国民年金法第19条など、各年金を定めた法律によって、一定の要件を満たす方のみ故人の未支給年金を受け取ることができるとされています。
具体的には、①その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であること、②死亡の当時その者と生計を同じくしていたこと、が必要とされています。
未支給年金は、国民年金法第19条1項などの各法により、相続放棄の有無に関わらず、受給することができるのです。

2.遺族年金

遺族年金とは、国民年金法などの法律に基づき、被保険者が死亡した場合に、その遺族に対して支給される年金のことをいいます。
遺族年金は、亡くなった方の遺族の生活保障のため、相続とは別に法律によって受給権者や受給方法を定めたものであり、遺族の固有の権利と解されていますから、相続財産ではありません。つまり、相続放棄の有無に関わらず、法律の要件を満たす場合に受給することができます。

3.仏壇、お墓、仏具などの祭祀財産

仏壇や仏具、お墓などのいわゆる祭祀財産は、民法上、相続人に引き継がれる相続財産とは別の取り扱いを受けています。具体的には、慣習に従って、祖先の祭祀を主宰する者が受け継ぐとされています(民法第897条)。
したがって、相続放棄をしたとしても、その人が、慣習上、祖先の祭祀を主宰する者であれば、お墓などを引き継ぐことができます。

4.香典、御霊前

香典や御霊前は、葬儀の主宰者(いわゆる喪主)に対して、葬儀に関係する各種出費にあてる趣旨でなされる贈与の性質を有するお金であるため、相続財産ではありません。
したがって、相続放棄の有無に関わらず、受け取ることができます。

おわりに

今回紹介したものは、いずれも相続財産ではなく、相続放棄をしても受け取り可能であることがわかりやすかったのではないでしょうか。
次回コラムでは、事例・事案によって、相続財産とされる(受け取りができない)場合と、相続財産ではないとして受け取りが可能である場合、ケースが分かれるものをまとめて紹介していきたいと思います。具体的な契約内容や規定等によって、受け取れたり受け取れなかったりする場合がありますので、迷われる場合は、事前に弁護士に相談頂くのが安心です。

 

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