相続放棄をしても、お墓・遺骨・仏壇など祭祀財産は受け取れますか?
相続放棄をしても、お墓・遺骨・仏壇などの祭祀財産を受け取ることができます。祭祀(さいし)に関する財産は、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するため、相続財産には含まれません。したがって、相続放棄をしたとしても、祭祀財産を承継することは可能です。
1.祭祀財産とは
祭祀(さいし)とは、祖先や神を祭ることをいい、祭祀財産とは、そのために必要な財産のことをいいます。具体的には、お墓、墓地、仏壇、位牌等があります。また、遺骨も祭祀財産に含まれると考えられています(最高裁平成元年7月18日判決)。
2.相続放棄と祭祀財産
相続放棄をすると、その相続については、初めから相続人ではなかったものとみなされます(民法939条)。しかし、祭祀財産は相続財産ではないため、相続放棄の影響を受けません。つまり、相続放棄をしたかどうか、相続人であるか否かは、祭祀財産の承継とは関係がありません。
3.祭祀財産を受け取る人
では祭祀財産はどのように承継されるのでしょうか。
この点について民法897条は、祭祀財産は次の順序で承継されるとしています。
- ①被相続人の遺言等によって指定された者
- ②被相続人の地域の慣習によって決められた者
- ③家庭裁判所の調停又は審判によって決められた者
遺言等がなく、相続人間での話し合いでも決まらない場合は、家庭裁判所の調停や審判により決まることになります。
参考条文
民法
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。